補助金の不正受給・返還リスク|罰則と対策を解説

シェアB!
a close up of a street sign on a tree
Photo by Erik Mclean on Unsplash(新しいタブで開きます)

補助金を受け取った後に「返還命令」や「刑事罰」のリスクがあることをご存じでしょうか。 補助金の不正受給は、意図的な詐欺行為だけでなく、手続きのルール違反でも交付決定の取消しや返還につながることがあります。 申請を検討している方も、すでに採択を受けた方も、本記事でリスクの全体像を把握しておきましょう。

本記事で説明する補助金適正化法は、国の補助金(国から自治体などを経由する間接補助金を含む)に適用されます。自治体が独自に出す補助金は、各自治体の条例・規則で定められています。


1. 補助金の不正受給とは何か|意図的な不正とルール違反

補助金の不正受給とは、偽りなど不正な手段で補助金を受け取ること、または決められた目的以外に使うことを指します。 大きく分けると「意図的な不正」と「手続きのルール違反」があります。

意図的な不正

  • 架空の事業計画を作成して申請する
  • 実際には購入・導入していない設備や ITツールを「導入済み」として報告する
  • 同じ経費で複数の補助金を重複して受け取る
  • 補助対象外の経費を対象経費として計上する

これらは詐欺罪(刑法246条)や、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金適正化法」)の罰則の対象になりうる行為です。

手続きのルール違反(悪意がなくても問題になるもの)

  • 交付決定の前に発注・契約・支払いをしていた
  • 経費の支払い方法が公募要領のルールと異なっていた(例: 銀行振込に限られているのに現金で払った)
  • 実績報告の期限を過ぎてしまった
  • 補助金で取得した設備を、決められた期間内に承認なく処分・転売した

「公募要領をよく読んでいなかった」「担当者が変わって引き継ぎが不十分だった」といった事情は、取消しを免れる理由にはなりにくいと考えておくべきです。 補助金は「受け取ったら終わり」ではなく、事業実施期間中・終了後も継続的なルール遵守が求められる点を、まず押さえてください。


2. 実際に指摘された不正の例|IT導入補助金

近年、不正が大きく問題になったのがIT導入補助金(2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」に改称)です。 中小企業・小規模事業者が会計ソフトや受発注システムなどを導入する費用の一部を補助する制度で、申請件数が多く、IT導入支援事業者が申請に深く関わる仕組みのため、不正が起きやすい面がありました。

会計検査院の指摘

報道によると、会計検査院は令和2〜4年度分の IT導入補助金を検査し、30事業主体・41事業で不正を指摘しました(補助金の額は約1億800万円)。 主な手口は次のようなものです。

  • IT導入支援事業者が「協賛金」「紹介料」などの名目で、補助金の一部を申請者に還流させていた(実質的な自己負担がない)
  • ツールを実際には導入していないのに、導入したとする虚偽の実績報告をしていた

事務局は、不正を行った IT導入支援事業者の登録取消しを公表しており、その事業者が関わった交付決定が取り消されることがあります。 「支援事業者が言うから大丈夫」という認識は危険です。補助金を受け取るのは申請した事業者自身であり、返還を求められるのも申請者です。

他の補助金でも

IT導入補助金に限らず、事業計画と実際の使い道が大きく違う場合などには、交付決定の取消し・返還命令の対象になります。 採択後の「事業実施の管理」と「証拠書類の整備」が欠かせません。


3. 交付決定の取消し・返還命令・加算金

補助金適正化法では、主に次の仕組みが定められています。

① 交付決定の取消し(第17条)

補助金を他の用途に使った場合や、交付の条件・法令に違反した場合などに、交付決定の全部または一部が取り消されることがあります。

② 補助金の返還(第18条)

取り消された部分について、すでに受け取った補助金は返還を命じられます。

③ 加算金(第19条第1項)

第17条第1項による取消し(不正な使用・条件違反など)で返還を命じられた場合、補助金を受け取った日から納付する日までの日数に応じて、年10.95%の割合で計算した加算金を納めることになります。 上限が「何割」と決まっているわけではなく、受け取ってから時間がたつほど大きくなります。

たとえば500万円を受け取ってからちょうど2年後に全額の返還を命じられて納めた場合、加算金はおおよそ 500万円 × 10.95% × 2年 = 約110万円です(実際の計算は日数単位)。

④ 延滞金(第19条第2項)

返還すべき補助金を納期日までに納めなかった場合は、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じて年10.95%の延滞金がかかります。

なお、やむを得ない事情があると認められる場合は、加算金・延滞金の全部または一部が免除されることがあります(第19条第3項)。

⑤ その後の補助金への影響

不正があった事業者に対しては、一定期間、補助金の交付を停止する措置がとられる場合があります。

ポイント: 返還の負担は「受け取った補助金の額」だけでなく、「返還額+加算金(+納付が遅れれば延滞金)」になります。受け取ってからの期間が長いほど、負担は大きくなります。


4. 刑事罰の可能性|補助金適正化法と詐欺罪

不正受給は返還だけでなく、刑事責任を問われる場合があります。

補助金適正化法の罰則(第29〜32条)

条文対象となる行為罰則
第29条偽りなど不正な手段で補助金の交付を受けた5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり)
第30条補助金を他の用途に使った3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(併科あり)
第31条命令違反・報告をしない・虚偽の報告・検査の拒否など3万円以下の罰金
第32条両罰規定実際に違反した人に加え、法人・事業主にも各条の罰金刑

両罰規定は、違反した代表者や従業員などを罰するのに加えて、法人にも罰金刑を科すしくみです。

詐欺罪(刑法246条)

国や地方公共団体をだまして補助金を受け取った場合、詐欺罪に問われることもあります。 法定刑は10年以下の拘禁刑です(2025年6月の刑法改正で「懲役」は「拘禁刑」に一本化されました)。

「支援業者に任せていた」は言い訳になりにくい

支援事業者やコンサルタントが主導した不正であっても、申請者が「知らなかった」だけで責任を免れられるとは限りません。 申請者として、申請・報告の内容に責任を負います。提出前に、自社で内容を確認する体制をつくっておきましょう。


5. 「知らなかった」を防ぐ5つの自己チェック

チェック① 公募要領を最新版で確認しているか

公募要領は公募期間中に改定されることがあります。 jGrants(デジタル庁が運営する補助金の電子申請システム)や事務局の公式サイトから最新版を確認し、対象経費・支払方法・実施期間を把握しましょう。

チェック② 補助対象経費と対象外経費を区別しているか

「これは対象に入るだろう」という思い込みは禁物です。 判断に迷う経費は、発注の前に事務局に確認してください。

チェック③ 発注・支払いの時期と方法がルールどおりか

多くの補助金では、交付決定の前に発注・契約・支払いをした経費は対象外です。 また「銀行振込に限る」「事業実施期間内の支払いに限る」などの制限もあります。公募要領で必ず確認してください。

チェック④ 取得した設備を、決められた期間内に処分していないか

補助金で取得した一定額以上の設備などは、耐用年数などに応じた期間、売却・廃棄・転用に事前の承認が必要です(補助金適正化法第22条)。 事業の方向転換や設備の入れ替えを考えるときは、事前に事務局に確認しましょう。

チェック⑤ 実績報告と書類の保管ができているか

採択後は、実績報告書の提出と、取得財産の管理が求められます。 担当者が変わっても引き継げるよう、見積書・契約書・請求書・領収書・振込記録などを体系的に保管してください。


関連サービスのご案内

補助金を「正しく使う」ためには、まず自社に合った制度を把握することが出発点です。

パブコメ・補助金レーダー(pubcome.jp) は、jGrants などから補助金を毎日自動収集する中立の情報サービスです。

  • 補助金一覧は登録なしで閲覧でき、詳細ページの「対象かんたんチェック」で、所在地・従業員数・業種の当てはまりを目安として確認できます
  • 無料登録すると、AI が業種・規模・事業内容から候補を理由付きで採点します(無料会員は1回お試し、2回目からはベーシックプラン)
  • 補助金を保存すると、締切の7日前にメールでお知らせします。週1回のお知らせメール(地域の補助金の締切+ウォッチ中の省庁のパブコメ締切)も選べます

業者の紹介・成功報酬・申請書の作成代行は行っていません。

pubcome.jp で無料登録(クレジットカード不要)


本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別事案への法的助言・税務助言を構成するものではありません。具体的な対応については行政書士・税理士・中小企業診断士・弁護士等の専門家にご相談ください。

この記事のつづき

自社で使える補助金を、まとめて追う

※本記事はAIによる自動生成を含みます。分析結果は参考情報であり、法的助言・行政書士業務ではありません。具体的な対応については専門家にご相談ください。

ブログ一覧に戻る