補助金の財産処分とは|設備の売却・廃業前に確かめる処分制限期間と承認手続き
国の補助金(と中小企業基盤整備機構などが交付する補助金)で買った設備は、処分制限期間のうちは事前の承認なしに売ったり譲ったりできません。承認を受ければ売却・譲渡・廃棄もできますが、残存簿価や売却額に応じて補助金の一部を納めるのが基本で、期間が過ぎればこの制限はかかりません。
自治体が単独で出す補助金は、各自治体の補助金規則などで定めます。対象財産の範囲、期間の長さ、納付額の計算方法は、法律で全部決まっているわけではなく、制度ごとの交付規程・公募要領で決まります。この記事では、法律の枠組みと、公開資料で確認できた実際の制度の決め方を分けて説明します。不正受給の返還リスクや圧縮記帳は別の記事で扱い、ここでは「設備を手放す・使い道を変える・事業をやめる」場面に絞ります。
根拠は補助金適正化法 第22条と施行令 第13条・第14条
国の補助金のルールの土台は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(以下「適正化法」)です。第22条は次のように定めています。
補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。(適正化法 第22条)
条文が出てくる「政令で定める財産」と「政令で定める場合」は、適正化法施行令が決めています。
| 条文 | 内容(要旨) |
|---|---|
| 施行令 第13条(対象財産) | ①不動産 ②船舶、航空機、浮標、浮さん橋及び浮ドック ③①②の従物 ④機械及び重要な器具で、各省各庁の長(または補助実施法人の代表者)が定めるもの ⑤その他、交付の目的を達成するため特に必要があるとして各省各庁の長などが定めるもの |
| 施行令 第14条第1項第1号(制限が外れる場合) | 適正化法第7条第2項の条件に基づき、補助金等の全部に相当する金額を国(または補助実施法人)に納付した場合 |
| 施行令 第14条第1項第2号(制限が外れる場合) | 補助金等の交付の目的と財産の耐用年数を勘案して、各省各庁の長などが定める期間を経過した場合 |
この第14条第1項第2号の「期間」が、いわゆる処分制限期間です。機械や器具は、施行令第13条第4号のとおりどれを対象にするかを各省庁などが決めるため、「いくらから対象か」は制度ごとに違います。
中小機構が交付する補助金にも準用される
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(以下「ものづくり補助金」。従来の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」とは名称が異なるので、要領を見るときは混同に注意)や事業再構築補助金は、中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」)が交付します。独立行政法人中小企業基盤整備機構法第16条は、機構が交付する助成金に適正化法の規定(罰則を含む)を準用するとし、「各省各庁の長」を「機構の理事長」、第7条第2項や第19条などの「国」を「機構」と読み替えています。
そのため第22条や、後で触れる第17条〜第19条(加算金を含む)は、これらの補助金にも準用の形でかかります。細部は各補助金の交付規程が定めています(事業再構築補助金のマニュアルは「交付規程第24条」を根拠として記載)。
「処分」に当たる行為:条文と公募要領での範囲
適正化法第22条が挙げる行為は、交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付け、担保に供することの5つです。実際の制度では、これに**廃棄(取壊し)**を加えて「処分」と定義している例があります。
| 行為 | 適正化法 第22条 | ものづくり補助金 公募要領 | 事業再構築補助金 マニュアル | 農林水産省 承認基準 |
|---|---|---|---|---|
| 目的外使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 譲渡(有償・無償) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 交換 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 貸付け(有償・無償) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 担保に供する | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 廃棄・取壊し | 記載なし | ○(「廃棄等」) | ○ | ○(「取壊すこと等」) |
出典:ものづくり補助金 公募要領、事業再構築補助金 財産処分承認申請 操作マニュアル、農林水産省 承認基準
見落としやすいのは次の2つです。
目的外使用:ものづくり補助金の公募要領(第1回、1.3版、令和8年9月)は、取得した財産は原則として「専ら補助事業に使用」する必要があるとしています。既存事業など補助事業以外で使えば交付の目的に反する使用と判断し、残存簿価相当額等の納付を求めるとしています。売っていなくても、既存のラインに回すだけで処分に当たることがあります。
担保に供する:同じ公募要領は、処分制限財産である建物等への抵当権設定を原則として認めず、補助事業の遂行に必要な資金調達で担保権の実行時に納付する条件の場合に限り、事前承認のうえで認めるとしています。根抵当権は認めていません。
逆に農林水産省は、補助目的として想定されていない一部の利用で財産の機能等を損なわないもの(加工施設の屋根貸しによる太陽光発電など)は処分に当たらないとしています(同省「補助対象財産の利用・処分」)。
処分制限期間と対象財産の金額基準の決まり方
期間:耐用年数を基準に、制度ごとに定める
施行令第14条が「耐用年数を勘案して」各省庁などが定めるとしているため、多くの制度は減価償却資産の耐用年数を目安にしています。ただし定め方は制度によって違います。
| 制度 | 処分制限期間の定め方 | 出典 |
|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)」を準用。事業計画期間の終了後でも、法定耐用年数を経過するまでは処分に制限がかかる | 公募要領 |
| 農林水産省所管の補助金 | 「農林畜水産業関係補助金等交付規則」第5条で、施行令第14条第1項第2号の期間は同規則の別表のとおりとし、補助金の名称と財産の種類ごとに年数を定める | 農林畜水産業関係補助金等交付規則 |
耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表で、資産の種類・用途・業種ごとに決まっています。同じ機械でも、どの業種の設備として分類されるかで年数が変わることがあります。
補助事業の期間や事業計画期間と、処分制限期間は別物です。報告義務の期間が終わっても、耐用年数が残っていれば制限は続きます。
対象財産の金額基準:制度ごとに確認する
施行令第13条第4号の「機械及び重要な器具」をどこからとするかは、制度ごとに定めます。確認できた例は次のとおりです。
- ものづくり補助金:取得価格または効用の増加価格が単価50万円(税抜き)以上の機械、器具及びその他の財産を「処分制限財産」とする(公募要領)
- 事業再構築補助金:「取得財産等管理台帳」(様式第7)に記載した単価50万円(税抜き)以上の財産等が財産処分承認申請の対象(操作マニュアル)
ほかの制度では基準が違うことがあるので、交付規程・交付要綱で確認してください。なお、施行令第13条第1号は不動産を金額の限定なしに挙げています。
承認申請の流れと納付額の考え方
事業再構築補助金の流れ(2025年9月時点のマニュアル)
事業再構築補助金の操作マニュアル(1.3版、2025年9月26日)では、手続きは次の順で進みます。
- 処分の前に、システムで「財産処分承認申請」(様式第12-1)を登録する(申請日は処分前の日付)
- 事務局が確認して承認すると、「財産処分承認通知書」(様式第12-2)を確認できる。ここで初めて処分してよい
- 処分した後に「財産処分報告」(様式第12-3)を登録する
- 報告が承認されると「財産処分に伴う納付について」(様式第12-5)で納付額を確認し、期日までに振り込む
納付額の基本:「残存簿価」か「譲渡額」に、補助の割合を当てる
ものづくり補助金の公募要領は、処分するときは「残存簿価相当額又は譲渡額等により、当該処分制限財産に係る補助金額を限度に納付」としています。上限はその財産にかかった補助金の額です。
事業再構築補助金のマニュアルでは、納付額の決め方が処分の種類で分かれています。
| 処分の種類 | 納付額の計算のもとになる額 |
|---|---|
| 有償譲渡以外(無償譲渡・貸付・交換・担保・廃棄・目的外使用) | 残存簿価相当額 |
| 有償譲渡で、3者以上の見積書を出した場合 | 見積額(実際の処分額に変更があればその額) |
| 有償譲渡で、見積書が3者未満の場合 | 見積額と残存簿価相当額のうち高い方 |
残存簿価相当額は処分日、償却方法(定率法・定額法)、端数処理から計算し、納付額はその財産の「補助対象経費」と「補助金の確定額」(実績報告の経費明細表の実績額)を入れて所定の計算式で出ます。
農林水産省の基準:時価評価額も比べる
農林水産省の承認基準(平成20年5月23日20経第385号、最終改正令和8年4月30日)別表1は、次のように決めています。
| 処分区分 | 国庫納付額(要旨) |
|---|---|
| 有償譲渡 | 譲渡契約額、残存簿価、時価評価額のうち最も高い金額 × 国庫補助率 |
| 無償譲渡 | 残存簿価または時価評価額のいずれか高い金額 × 国庫補助率 |
| 目的外使用(補助目的の使用を継続する場合) | 目的外使用部分の残存簿価または時価評価額のいずれか高い金額 × 国庫補助率 |
| 使用の中止(道路拡張等で取り壊す場合) | 処分で生じる収益(損失補償金を含む) × 国庫補助率 |
| 長期間(1年以上)の貸付け | 残存簿価または時価評価額のいずれか高い金額 × 国庫補助率 |
| 交換(下取交換以外) | 交換差益額 × 国庫補助率 |
返還の上限は、処分する財産に係る国庫補助金等の支出額です(別表1 備考1)。時価評価額のための不動産鑑定料が時価評価額を上回るのが明らかな場合は、残存簿価などに読み替えられる例外もあります(注4)。
安く売っても納付額が下がるとは限らない点に注意してください。事業再構築補助金は見積が3者未満なら残存簿価と比べ、農林水産省の基準は原則として時価評価額とも比べて高い方を使います。
廃業・事業譲渡・移転のときの注意
廃業:処分の前に承認を取る
事業をやめても、処分制限期間内の財産は制限を受けたままです。事業再構築補助金のマニュアルは、入力例に「補助事業は廃止し、本品は売却により処分としたい」「売却先を探したが見つからないためサイトを閉鎖し廃棄」を挙げており、廃業に伴う売却や廃棄も承認申請の対象として扱っています。
承認を受けずに処分すると、法令や交付決定の条件に違反したとして適正化法第17条第1項(中小機構の補助金は準用)による交付決定の取消し、第18条第1項による返還命令の対象になり得ます。返還を命じられると、第19条第1項により受領の日から年10.95パーセントの加算金がかかります。
事業譲渡・事業承継:譲り受け先の条件を確かめる
ものづくり補助金の公募要領は、事業計画期間中に「補助対象外となる事業者や大企業への事業承継」をすることも交付の目的に反する使用に当たるとしています。事業再構築補助金のマニュアルは、代表者から連携者への譲渡も「譲渡」に含めています。
農林水産省の承認基準には、条件付きで納付が要らない譲渡の例があります。所有者の法人化に伴い設立された法人へ譲渡し、経営に同一性・継続性が認められる場合や、法人が議決権の過半数を持つ別法人に譲渡する場合です。いずれも残りの処分制限期間、補助条件を承継することが条件です。ほかの制度にも同じ扱いがあるとは限らないので、事業譲渡の契約前に事務局へ確認してください。
移転:場所を動かすだけでも確認する
事業再構築補助金の処分の分類には「目的外使用(場所を移動した場合)」があり、例に「既存事業で使用するため場所を移動して目的外使用」を挙げています。移転先での用途によって扱いが変わり得るので、移設の計画段階で事務局へ相談してください。
リース・災害の場合
- リース:ものづくり補助金でリース会社と共同申請した場合も、取得財産には同じように処分の制限がかかります。公募要領は、特段の事情がない限りリース期間を処分制限期間を含む長さにするよう求めています。
- 災害:事業再構築補助金では、責めに帰すことができない災害・火災で使えなくなった財産を廃棄などした場合、処分後の「災害等による財産処分報告」(様式第12-4)が受理されれば承認を受けたものとみなされます。保険金などの収入があれば納付が必要です。
処分制限期間が過ぎた後の扱い
施行令第14条第1項第2号により、処分制限期間を経過すれば適正化法第22条の制限はかからず、承認なしに売却・廃棄しても同条の違反にはなりません。
期間内でも、同項第1号により、適正化法第7条第2項の条件に基づいて補助金等の全部に相当する金額を納付した場合は制限が外れます。
農林水産省の承認基準には「長期利用財産」の扱いもあります。補助目的に従って10年を経過した財産を指します。地方公共団体以外の所有者が地域活性化等を図るためにこれを処分する場合、たとえば同等の機能を持つ財産を自ら確保して使用を続ける場合や、国・地方公共団体へ無償で譲渡・貸付けする場合は、報告書が受理されれば承認があったものとみなされます(承認基準第5条)。これは農林水産省の基準の扱いで、ほかの省庁の制度にそのまま当てはまるわけではありません。
期間の終わりは取得日と耐用年数から数えますが、起算日などに制度独自の定めがある場合もあります。管理台帳で取得日を確かめ、迷ったら事務局に確認してください。
まとめ
- 国の補助金で取得した財産は、適正化法第22条(中小機構が交付する補助金は中小機構法第16条による準用)により、処分制限期間内は承認なしに目的外使用・譲渡・交換・貸付け・担保提供ができない。制度によっては廃棄も「処分」に含まれる
- 対象財産は施行令第13条で決まり、機械・器具の範囲は制度ごとに定める。ものづくり補助金と事業再構築補助金は単価50万円(税抜き)以上
- 処分制限期間は耐用年数を基準に制度ごとに定める(ものづくり補助金は耐用年数省令を準用、農林水産省は交付規則の別表)。事業計画期間が終わっても続く
- 承認を受けたうえで、残存簿価相当額や譲渡額などをもとに、その財産の補助金額を上限として納付するのが基本。安く売っても残存簿価などと比べて高い方が使われることがある
- 廃業・事業譲渡・移転・担保設定の前に、まず事務局へ相談する。承認なしの処分は交付決定の取消し・返還・加算金(年10.95パーセント)につながり得る
- 期間を過ぎれば第22条の制限はかからない。取得日と年数は管理台帳で確かめる
この記事は一般的な仕組みの説明です。個別の財産が対象か、納付額がいくらになるかは、交付決定を受けた補助金の交付規程・公募要領と事務局の案内で確認し、必要に応じて専門家に相談してください。
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※本記事はAIによる自動生成を含みます。分析結果は参考情報であり、法的助言・行政書士業務ではありません。具体的な対応については専門家にご相談ください。
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