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2026年6月24日2026年10月1日 更新解説記事

補助金の圧縮記帳|仕訳例・勘定科目と期をまたぐ場合・個人事業主の扱い

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Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash

結論:補助金は課税されるが、圧縮記帳で課税を「繰り延べ」できる

補助金は返済不要のため、法人では益金、個人事業主では原則として総収入金額に算入され、課税の対象になります。設備投資のための補助金がそのまま課税されると、受け取った年に多額の税金がかかり、投資を後押しするという補助金の目的と矛盾してしまいます。

そこで、補助金で固定資産を取得した場合には、資産の帳簿価額(取得価額)を補助金の額だけ引き下げることで、受け取った年の課税を避けられる仕組みがあります。これが圧縮記帳です。

押さえておきたいポイントは3つです。

  • 非課税ではなく「課税の繰り延べ」:帳簿価額が下がる分、毎年の減価償却費が減り、その分あとから課税されます。トータルの課税所得は変わりません。
  • 対象は固定資産の取得・改良に充てた補助金だけ:外注費・広告費・専門家謝金などの経費に充てた部分は圧縮記帳できず、そのまま課税されます。
  • 法人と個人事業主で根拠条文と処理が違う:法人は法人税法第42条〜第44条、個人事業主は所得税法第42条・第43条(総収入金額不算入)です。

法人の圧縮記帳の要件(法人税法第42条〜第44条)

法人が国庫補助金等で取得した固定資産について圧縮記帳する根拠は次の3条です。

条文内容使う場面
第42条国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入返還不要が期末までに確定している(通常のケース)
第43条国庫補助金等に係る特別勘定の金額の損金算入期末時点で返還不要が確定していない
第44条特別勘定を設けた場合の圧縮額の損金算入第43条の特別勘定を設けた後、返還不要が確定した

第42条の主な要件は次のとおりです。

  1. 国または地方公共団体の補助金等(政令で定めるものを含む)であること
  2. 固定資産の取得または改良に充てるためのものであること
  3. 補助金等の返還を要しないことが、その事業年度終了の時までに確定していること
  4. 確定申告書に圧縮額の損金算入に関する明細を記載すること(別表13(1))

4の明細の記載がないと適用を受けられないので注意してください(やむを得ない事情がある場合の救済規定はあります)。


勘定科目と2つの経理方法

よく使う勘定科目

勘定科目区分使う場面
国庫補助金受贈益特別利益(雑収入とする例もある)補助金の額が確定・入金したとき
固定資産圧縮損特別損失直接減額方式で帳簿価額を引き下げるとき
圧縮積立金純資産の部(任意積立金)積立金方式のとき
未収入金流動資産補助金の額が確定したが未入金のとき

方式① 直接減額方式

固定資産の帳簿価額を直接減額し、同額を「固定資産圧縮損」として損金に計上します。処理がシンプルで、中小企業で広く使われています。

方式② 積立金方式

帳簿価額は減らさず、確定した決算(または決算確定日までの剰余金の処分)で「圧縮積立金」を積み立て、申告書の別表4で減算(別表5(1)で管理)して課税を繰り延べます。その後は減価償却に合わせて積立金を取り崩し、取り崩した額を別表4で加算します。貸借対照表に資産の取得価額をそのまま残せる反面、申告調整が毎期必要になります。

どちらを選ぶかは財務方針によります。迷う場合は、顧問税理士と決めておくとよいでしょう。


仕訳例①:同じ事業年度に設備取得と補助金確定があった場合

ものづくり補助金で機械装置を購入した例です(数値は解説用の仮定です)。

項目金額
機械装置の取得価額1,000万円
補助金の額(補助率1/2の想定)500万円
耐用年数10年(定額法)

ステップ1:設備の取得時

(借)機械装置 10,000,000 / (貸)普通預金 10,000,000

補助金分も含めて、取得価額の全額で資産計上します。

ステップ2:補助金額の確定時・入金時

実績報告を経て補助金の額が確定したら収益に計上します。入金前に決算を迎える場合は未収入金で計上するのが一般的です。

(借)未収入金 5,000,000 / (貸)国庫補助金受贈益 5,000,000
(入金時)
(借)普通預金 5,000,000 / (貸)未収入金 5,000,000

ステップ3:圧縮記帳(直接減額方式)

(借)固定資産圧縮損 5,000,000 / (貸)機械装置 5,000,000

受贈益500万円と圧縮損500万円が相殺され、当期の課税所得への影響がなくなります。

ステップ4:減価償却

圧縮後の帳簿価額500万円をもとに償却します(1年分の場合)。

年間の減価償却費 = 500万円 ÷ 10年 = 50万円

圧縮しなければ年100万円だった償却費が年50万円になります。この差額の分だけ、毎年少しずつ課税されていくイメージです。


仕訳例②:期をまたぐ場合(前期に設備取得、今期に補助金確定)

補助金の多くは**精算払い(後払い)**です。設備の購入・支払いを済ませ、実績報告と確定検査を経てから入金されるため、設備の取得は前期、補助金の確定は今期という「期またぎ」がよく起こります。

前期:通常どおり取得・償却する

(借)機械装置 10,000,000 / (貸)普通預金 10,000,000
(借)減価償却費 1,000,000 / (貸)機械装置 1,000,000

前期の時点では補助金は確定していないので、圧縮記帳はできません。取得価額1,000万円のまま償却します(1年分100万円と仮定)。

今期:補助金を計上し、すでに償却した分を除いて圧縮する

前期以前に取得した減価償却資産に補助金が交付された場合、圧縮できる上限(圧縮限度額)は、補助金の額からすでに償却した部分に対応する金額を差し引いた額になります(法人税法施行令第79条の2)。別表13(1)での計算は次のとおりです(補助金の額から、償却済みの部分に対応する額を差し引くのと同じ結果になります)。

圧縮限度額 = 補助金の額 × (返還不要が確定した日の帳簿価額 ÷ 取得価額)
           = 500万円 × (900万円 ÷ 1,000万円)
           = 450万円
(借)未収入金 5,000,000 / (貸)国庫補助金受贈益 5,000,000
(借)固定資産圧縮損 4,500,000 / (貸)機械装置 4,500,000

圧縮後の帳簿価額は 1,000万円 − 100万円 − 450万円 = 450万円 です。直接減額方式の場合、税務上は取得価額から圧縮額を差し引いた550万円が取得価額とみなされるため(法人税法施行令第54条3項)、定額法なら以後は年55万円(550万円 × 0.100)ずつ償却し、帳簿価額450万円を償却し終えます。

前期に多めに償却した分は、今期の受贈益500万円と圧縮損450万円の差額(50万円)として課税されます。損金の合計(前期の償却100万円+圧縮損450万円+今後の償却450万円=1,000万円)から受贈益500万円を引くと500万円となり、最初から自己負担500万円で取得した場合と一致します。

補助金を先に受け取り、期末時点で返還不要が確定していない場合

概算払いなどで補助金を先に受け取ったものの、期末までに返還不要が確定しない場合は、第42条の圧縮記帳はできません。この場合は特別勘定(第43条)を設けて損金算入し、翌期以降に返還不要が確定した時点で圧縮記帳(第44条)を行います。


補助金ごとの当てはめ(どの経費が圧縮記帳の対象か)

圧縮記帳できるのは、補助金のうち固定資産の取得・改良に充てた部分だけです。経費区分は公募回によって変わるため、以下は一般的な傾向として、最新の公募要領で確認してください。

補助金圧縮記帳の対象になり得る経費対象外(そのまま課税)になりやすい経費
ものづくり補助金機械装置・システム構築費(資産計上するもの)技術導入費、専門家経費、外注費、クラウドサービス利用費など
事業再構築補助金(新規公募は終了。後継は新事業進出補助金)建物費、機械装置・システム構築費広告宣伝・販売促進費、研修費、外注費など
小規模事業者持続化補助金機械装置等費のうち資産計上するもの広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費など(多くはこちら)
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)購入して資産計上するソフトウェア(無形固定資産)、ハードウェアクラウド利用料など費用処理するもの

1つの補助金で資産と経費の両方を対象にしている場合は、資産に充てた補助金の額を区分して圧縮額を計算します。

また、補助金で取得した資産には処分制限期間があり、期間内に売却・転用などをする場合は事前承認が必要で、補助金の返還を求められることがあります。


個人事業主の場合(所得税法第42条・第43条)

個人事業主には法人のような「圧縮損」の計上ではなく、総収入金額不算入という仕組みがあります。

  • 固定資産の取得・改良に充てた国庫補助金等は、その年の総収入金額に算入しません(所得税法第42条、所得税法施行令第89条〜第91条)。
  • 代わりに、固定資産の取得価額は取得に要した金額から補助金の額を控除した金額になり、それをもとに減価償却します。
  • 適用を受けるには、確定申告書に「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付します。
  • 判定の基準日は12月31日です。交付を受けた年の12月31日までに返還不要が確定しない場合は第43条の扱いになります。

先ほどの例(取得1,000万円、補助金500万円)なら、補助金500万円は事業所得の収入に含めず、機械装置の取得価額を500万円として償却します。

前年以前に取得した減価償却資産に補助金が交付された場合も、国税庁の明細書の書き方では、補助金の額から「確定日までの減価償却累計額 × 補助金の額 ÷ 取得価額」を差し引いた額を不算入額とする計算が示されています(法人の仕訳例②と同じ考え方です)。

個人事業主が使える補助金の探し方は「個人事業主が使える補助金ガイド」で解説しています。


圧縮記帳をしないという選択と注意点

圧縮記帳は任意

圧縮記帳は使わなくてもかまいません。圧縮しなければ受贈益がそのまま課税される代わりに、取得価額のまま償却できるので、将来の償却費は大きくなります。トータルの課税所得は同じで、いつ課税されるかが違うだけです。

たとえば繰越欠損金がある、当期が赤字といった場合は、受贈益を欠損金と相殺できるため、圧縮しないほうが有利になることがあります。

消費税は「不課税」

補助金そのものは対価性がないため、消費税の不課税取引です。一方、補助金で購入した設備の代金は通常どおり課税仕入れになります。

法人で帳簿価額が1円未満になる場合

法人で、全額が補助金で賄われた場合など圧縮後の帳簿価額が1円未満になるときは、**1円以上の帳簿価額(備忘価額)**を残す必要があります(法人税法施行令第93条)。

保存しておく書類

交付決定通知書、額の確定通知書、請求書・領収書、実績報告書の控えは、税務調査で圧縮記帳の根拠を示すために必要です。採択後の手続きは「補助金の実績報告・交付請求チェックリスト」にまとめています。


よくある質問

補助金は必ず圧縮記帳しなければいけませんか?

いいえ、任意です。当期の税負担を抑えたい場合は圧縮記帳、繰越欠損金がある場合などは圧縮しない、というように選べます。

補助金の勘定科目は「雑収入」でもよいですか?

法人では「国庫補助金受贈益」(特別利益)とするのが一般的ですが、雑収入で処理している例もあります。重要なのは、圧縮記帳する場合に別表13(1)で明細を記載することです。

補助金が入金される前に決算を迎えたらどうなりますか?

補助金の額が確定していれば未収入金で受贈益を計上し、同じ期に圧縮記帳できます。期末時点で確定していなければその期は計上せず、確定した期に「仕訳例②」の方法で処理します。

圧縮記帳した資産を途中で売却したらどうなりますか?

帳簿価額が低くなっているため、売却益が大きく出て、繰り延べていた分が課税されます。また処分制限期間内であれば、事前承認と補助金の返還が必要になることがあります。

持続化補助金でも圧縮記帳はできますか?

固定資産として資産計上するもの(機械装置など)に充てた部分だけが対象です。広報費やウェブサイト関連費などの経費に充てた部分はできません。


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本記事は2026年10月時点の法令に基づく一般的な情報提供を目的とし、個別事案への税務助言を構成するものではありません。実際の処理は事業年度・補助金の種類・交付条件によって異なります。具体的な対応については税理士等の専門家にご相談ください。

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